イベント
第16回防災セミナー「コミュニティ防災のための地震ハザードマップ」
第16回防災セミナー「コミュニティ防災のための地震ハザードマップ」
2016年11月11日東京


防災セミナー・シリーズ:世界銀行東京事務所、世界銀行東京防災ハブ 共催

毎日の生活の中で、通勤、通学している地域コミュニティが、どのような自然災害リスクにさらされているかご存知でしょうか。最寄りの避難場所や避難経路を把握されていますでしょうか。

日本は、住民が自然災害リスクを理解し災害時に備えるため、「ハザードマップ」の整備を進めてきました。結果として、現在では、ほぼ全てのコミュニティにおいて事前防災に必要な情報を得ることが可能になっています。こうした日本の取り組みを途上国と共有するために、世界銀行東京防災ハブは、日本で行われている地震ハザードマップ作成の手法を紹介するハンドブックを作成しました。本ハンドブックは、開発途上国の自治体やコミュニティが、ハザードマップ整備を通じて事前防災に必要な情報を取りまとめ、伝達を促進するために役立てられます。セミナーでは、リスク評価や活用方法についても紹介します。

 

プログラム

開会挨拶

塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

講演

齋藤 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 防災専門官
「地震防災マップ」PDF (英語・日本語)

蓮見 純一
さいたま市 都市局 都市計画部 都市総務課 課長補佐 / 政策係長
「さいたま市防災都市づくり計画におけるリスク評価と具体施策」PDF

ヤンティサ・アカディ
インドネシア 人道支援オープン・ストリート・マップ チーム InaSAFE プロジェクト・マネージャー
「InaSAFEと防災のためのデータの備え」PDF (英語)

モデレーター

金田 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

(敬称略)

 

❖ このセミナーは、公開用に録画されます。

❖ 当日、セミナーをライブ配信します。こちらのリンクからご覧ください。

スピーカー紹介

セミナー報告


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Image塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

2013年8月現職に就任。日本の政府、CSO、企業、研究機関等と世界銀行との協力関係強化を使命とする。就任以来、世界銀行東京事務所内に設置された東京防災ハブの設立にも参画。現職就任前、2008年から2011年には米州開発銀行理事として同行の融資案件の審議と政策決定に関与。1988年から1991年にはアフリカ開発銀行理事としてコートジボワールに駐在。また、1994年から1998年には国際金融情報センター・ワシントン事務所長として米国の政策決定過程等につき調査。1980年4月大蔵省 (現:財務省) に入省。

 

Image齋藤 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 防災専門官

世界銀行 防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) イノベーション・ラブ・チーム所属、防災専門官。地理空間データを応用した防災リスク管理の専門家であり、同分野における10年以上の実績を持つ。災害への事前準備から復旧・復興に至るまでの一連の災害管理サイクルにおける全フェーズで、空間情報学の特質を活用し、防災に役立てるための研究を進める。革新的かつ地域社会に密着した防災対策を推進することで災害リスク軽減を図るため、世界各地でハッカソン開催を支援。こうした活動が最終的に政策レベルにつながり、より強靭な社会が形成されることを目指す。世界銀行入行前は、ケンブリッジ・アーキテクチュラル・リサーチ社にて多領域リスク管理および評価チームに所属、ディレクターを務める。また、ウィリス・グループ 主任研究員、ケンブリッジ大学 建築学科 上級研究員として従事。ケンブリッジ大学 大学院にて地理学修士、ならびに震災後被害評価におけるリモートセンシング (人工衛星による遠隔探査技術)・データ利用に関する博士号取得。

 

蓮見 純一
さいたま市 都市局 都市計画部 都市総務課 課長補佐 / 政策係長

2014年4月より現職。1993年に大宮市 (現:さいたま市) 入庁後、市街地整備事業、都市公園事業、都市計画事業など都市行政全般に従事。都市総務課では、防災という緊急課題に対応するため、災害に強い空間づくりと災害時の避難や応急活動を支える空間づくりの基本方針や具体的施策を定める「防災都市づくり計画」の策定を担当。現在、災害リスクの分析、評価から延焼リスク対策の具体施策を推進するとともに、リスク情報の共有化と地域の災害対応力の強化に資する活動に携わる。

 

Imageヤンティサ・アカディ
インドネシア 人道支援オープン・ストリート・マップ チーム InaSAFE プロジェクト・マネージャー

 

 

 

Image金田 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

防災専門官として、2014年より世界銀行東京防災ハブに勤務。「日本-世界銀行防災共同プログラム」を通し、国・地域別の技術支援プログラム、および日本の防災の知見を活用し開発途上国と共有するプログラムの形成や管理を行う。途上国において防災を主流化するため、世界銀行の地域ごとの防災チームとともに、多様なセクターとの連携案件形成を支援する。過去の災害復興事業従事の経験を踏まえ、2015年に壊滅的被害を被ったネパールやバヌアツにおける被害調査、ならびに世界銀行による復興プロジェクト形成に従事。世界銀行入行前は、国連開発計画事務局 (UNDP) および国連人間居住計画 (UN-Habitat) インドネシア事務所、国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) 南スーダン事務所、国際協力機構 (JICA) モンゴル事務所にて、約10年間にわたり、住宅再建を中心とした自然災害・紛争後の復興事業、事前対策、気候変動適応、都市開発などに携わる。京都工芸繊維大学大学院修士課程修了、工学修士。現在、京都大学大学院 工学研究科 建築学専攻にて博士後期課程履修中。

 

(講演順、敬称略)

 

セミナー概要

セミナー報告

 

世界銀行東京防災ハブは、日本の防災に関する知見をグローバルに共有するためのプログラム「知見共有プログラム」を推進しています。その一環として、地震・津波リスクに関する住民の理解を深め、事前の避難措置準備を促すことを目的とする「ハザードマップ (防災マップ)」整備の手法をテクニカル・ハンドブックとしてまとめました。今回のセミナーは本ハンドブックの完成を記念して開催されました。

セミナーでは、リスクの理解と伝達に関する途上国における課題、日本のハザードマップ整備の経験から得られる教訓について議論が行われました。

 

開発途上国が直面する課題と世界銀行の取り組み

塚越保祐 世界銀行グループ 駐日特別代表は、開会挨拶の中で、途上国においてリスクに必要なハザード情報や地理的情報の不足、また住民に対する周知に関する制約といった課題があることにふれ、こうした現状を改善したいという途上国の要望を踏まえ、このたび作成されたハンドブックが実践的なガイドラインとして活用されることを期待していると述べました。

齊藤恵子 世界銀行 防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) 防災専門官は、今回テクニカル・ハンドブックにまとめた日本におけるハザードマップ整備の取り組みと教訓について発表しました。日本では、科学的手法で特定されたリスクを住民にわかりやすい形で周知し、災害時に住民一人ひとりが行動を起こせるような環境づくりが国全体として行われており、世界でも数少ない先進的な取り組みであると述べました。途上国では、リスクを特定するために必要な地理情報や過去の災害情報などのデータの不備、リスクに関する情報が集約・管理されていないため、有効活用されていない状況を踏まえ、途上国のニーズにこたえる形で、今回、東京防災ハブのイニシアチブにより防災マップ作成に関するテクニカル・ハンドブックが作成されたと説明しました。すでに、このハンドブックを活用したワークショップが地震リスクを抱えるウズベキスタン、アルメニア、キルギス、タジキスタンで行われ、今後、地震・津波リスクのあるインドネシアやトンガでも行われる予定であると述べました。

 

日本の経験から学ぶ

蓮見純一 さいたま市 都市局 都市計画部 都市総務課 課長補佐から、首都直下地震への備えとして、地震および二次災害リスクがもたらす状況を科学的に評価し、その結果を災害前・発生後の対策に活用している事例を紹介いただきました。この中で (1) 災害に強い都市づくり政策、(2) 市民の防災対応能力強化の2つの活動が紹介されました。(1) については、「さいたま市防災"も"都市づくり計画」に触れ、防災だけではなく、社会課題である高齢者対策なども考慮した、住みやすい街づくりの推進が報告され、(2) については、出前講座やインターネットを活用した、市民の日常の一部としてリスク情報を提供する工夫が紹介されました。この中で、市主導による情報普及に比べ、住民のリクエストにこたえる形の普及の方が圧倒的に普及率があがるため、住民の主体性を助長するような取り組みが重要であるとの報告がありました。

また、多くの市町村が防災マップ作成のためのリスク評価手法としてシナリオ型リスク評価を採用する中、さいたま市は都市の性能を考慮した手法を採用していることが紹介されました。シナリオ型で評価した場合との具体的な違いにふれ、発生確率に関係なく、起こりうる地震に備えるため、こうした手法が採用されたとうい経緯についてご説明いただきました。

 

インドネシアにおけるリスク評価と活用

インドネシア 国家防災庁 (BPNP) が整備し、世界銀行も支援を行った、リスク特定および活用のためのプラットフォーム、InaSAFEについて、ヤンティサ・アカディ InaSAFEプロジェクト・マネージャーからご報告いただきました。アカディ氏は、InaSAFEの特徴として、リスク評価に必要な地理的情報や建物のデータを住民らが参画して収集している手法を紹介しました。また整備されたプラットフォームの活用として、災害後の被害状況の迅速な把握・共有を紹介しました。また、現在では災害前の防災計画策定に際したシミュレーション目的や、住民への情報普及のための活用が進み始めている状況にも言及しました。ジャカルタ特別市から始まったこの取り組みは、第二の都市スラバヤでも現在展開しつつあり、今後、順次、リスク情報の入手が困難である地方へ普及されていくであろうと述べました。

当日は、政府、民間セクター、学術・研究機関、NGO等から多くの参加をいただきました。会場参加者とのディスカッションでは、途上国の防災担当組織が比較的新しい組織であることが多いことなどが理由で発生するコーディネーション上の課題や、目的を明確にしたリスク評価の重要性が指摘されました。


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イベント詳細
  • 日時: 2016年11月11日 (金) 午後4時30分~午後6時00分
  • 場所: 世界銀行東京事務所 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル10階
  • 言語: 英語・日本語 (同時通訳付)
  • お問合せ: 世界銀行東京防災ハブ TEL: 03-3597-1320
  • drmhubtokyo@worldbank.org

日本-世界銀行防災共同プログラム






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